魂を撮るということ 〜平間至さんの写真展で感じたこと〜

夏野葉月です。
2019年1月28日まで新宿のニコンギャラリーで行われていた写真家の平間至さんの写真展「平間至写真館大博覧会」に行ってきました。
自分の中で胸打たれたそのときの感じを思い出しながら、平間至さんと彼の写真について書けたらと思います。

タワーレコードの「No Music, No Life?」で採用された写真を通じて、平間さんの写真を観たことがある人はいるのではないでしょうか。
私が平間さんと平間さんの写真をはじめて観たのは以前あった写真雑誌「フォトグラフィカ」の平間至特集号ででした。
私はあの頃写真を学び始めたばかりで、巻頭に掲載された躍動感溢れる写真に「こんな生き生きとして、写されている人が写真の中で生きているように撮る写真家がいるんだ」と感銘を受けたことを覚えています。

その後、2011年に東日本大震災が起き、平間さんの故郷である塩竈市も甚大な被害を受けました。
当時私は震災のショックで心身の体調をとても崩していて、自殺しそうな自分を止めるために自ら精神科に入院していました。
ただ入院したことで病状こそ落ち着いたものの、テレビに映る被災地でボランティアをする人々の姿を見ながら「これでいいのだろうか」との自問自答を繰り返していました。
そんなとき、雑誌アサヒカメラに掲載された齋藤陽道さんの作品を拝見し、同時に平間さんが被災の影響の残る塩竈でフォトフェスティバルを開催されることを知りました。
私は陽道さんの写真と平間さんの活動を知り、病床にいたからこそ、とても励まされました。
「私はボランティアもなにもできないけれど、被災地に行くことで復興の手助けになるなら行こう」と考え、病院を退院して塩竈フォトフェスティバルのポートフォリオレビューに参加しようと決めました。

私は2010年にキヤノン写真新世紀で佳作を受賞した「change of life」を持参し、参加の選考のために作品をフォトフェスティバル事務局に郵送しました。
作品は無事通過して、私はポートフォリオレビューに人生ではじめて参加しました。
私は当時休学していた日本写真芸術専門学校の講師以外に写真に関するアドバイスを得た経験が少なく、どのようにレビューを準備したらいいのかも手探りの状態でした。
私がレビューをお願いした方はZen Foto GalleryのMark Pearsonさん、サードギャラリー綾の綾智佳さん、そして平間至さんでした。

当時の私はぼろぼろの体調で、それでも作品を見せに来た私に平間さんや綾さんは気遣いながらも暖かなコメントを下さいました。
レビューを観覧する他の参加者の方からも様々な感想をいただき、とても励みになったことを覚えています。
そのレビューがご縁で、2013年3月に私が浅草浪花屋のギャラリーで写真展「change of life」を開催したとき、平間さんにトークイベントでお話しいただけないかお願いしたことがあります。
私の写真を覚えていただいた平間さんは快諾してくださって、私の闘病や虐待も踏まえて写真や写真表現について貴重なお話しをたくさんしてくださいました。
そうした経緯があり、どうしても平間さんの個展は観に行きたいと思いました。

会場はニコン新宿が持つ2つのギャラリーが両方使われ、1つめのギャラリーは黒に塗られた壁に白黒のポートレート作品が、2つめのギャラリーは白壁にカラー写真のポートレートが飾られていました。
私は出張写真撮影を中心に仕事をしており、スタジオや写真館で働いた経験はありません。
だけど、写真を見ればどれだけ繊細なライティングで、それでいて大きく豊かな心で撮影にあたられたのか強く伝わってきました。

写真は様々な服装、職業、シチュエーションで撮られ、その人たちの魂や存在が伝わってくるような写真でした。
1枚1枚に全身全霊を込めて撮影された写真は、その人が仮に明日亡くなっても、遺された人が写真を見ればいつでもそこに会えるようでした。
写真には写された人だけでなく、撮影した人の魂が宿ると私は思います。
そうした意味で、写真撮影をお願いした人と平間さんの間にある愛や信頼が伝わってきて、私は何度も会場を往復しながら、泣きそうになりました。

人は、必ず、死にます。
だけど、だからこそ、なにかを残そうとする。
作品であれ、写真であれ、人々が残そうとする動機は、自分が死んだ後に残される大切な人への愛じゃないのでしょうか。
私は写真の持つ意味とは、愛を伝えることだと思います。
だからこそ写真を通じてその人の姿を残すことは本当に大切なことだと、私は感じました。

写真展を見終わった後、平間さんにご挨拶しました。
緊張しながらも「1枚撮らせていただけませんか」とお願いした私に、平間さんは気さくに応じてくれました。
1番好きな写真の前で撮らせてくださいとお伝えしたところ、「では娘の写真の前で」と赤い着物の素敵な女性の写真を背景に、1枚撮影させていただきました。
ほのかに微笑む平間さんの視線は、塩釜ではじめてお会いしたときのように暖かでした。

私はいま写真展で撮影した写真を見返し、平間さんの写真や私と関わってくださった平間さんとの関係を思い出しながら、泣きながら書いています。
私はとても未熟な写真家です。
平間さんやこれまで撮影していただいた様々な写真家の方々の技術や気持ちにはまだまだ届きません。
その上で、写真や文章を通じて、私に関わらせていただくことを許してくれた方々の魂がそこに留まるように形にしていけたらと強く思っています。

写真展の新宿での会期は終わってしまいましたが、3月28日から大阪にあるNikon THE GALLERY 大阪に巡回します。
大阪に行かれる機会のある方は、ぜひ足を運んでみてください。

平間至 写真展「平間至写真館大博覧会」
会場:Nikon THE GALLERY 新宿1&2
会期:2019年1月 5日(土) 〜 2019年1月28日(月) 日曜休館
時間:10:30〜18:30(最終日は15:00まで)
住所:東京都新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー28階
電話:03-3344-0565

会場:Nikon THE GALLERY 大阪
会期:2019年3月28日(木) 〜 2019年4月10日(水) 日曜休館
時間:10:30〜18:30(最終日は15:00まで)
住所:大阪府大阪市北区梅田2-2-2 ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
電話:06-6348-9698

平間 至 (ヒラマ イタル)
写真家。宮城県塩竈市生まれ。
写真から音楽が聞こえてくるような躍動感のある人物撮影で、今までにないスタイルを打ち出し、タワーレコードの「No Music, No Life?」キャンペーンのポスターをはじめ、多くのミュージシャンの撮影を手掛ける。
2006年よりゼラチンシルバーセッションに参加、2008年より「塩竈フォトフェスティバル」を企画・プロデュース。
2015年1月三宿に平間写真館TOKYOをオープンする。
Web:http://www.itarujet.com/
平間写真館TOKYO:http://hirama-shashinkan.jp/

ABOUTこの記事をかいた人

1976年生まれ。写真家&文筆家。解離性同一性障害で合計4人の人格で暮らす。 幼少期に虐待を経験後、中学生で不登校に。20歳通信制高校へ進学+22歳法政大学へ入学。25歳で躁うつ病を発病後、フリーランスカメラマンに。2010年キヤノン写真新世紀佳作受賞。2013年小笠原諸島移住中にスイスで写真展を開催。2016年鎌倉に移住。